VOICE

2021.03.01 | Partner’s Voice

interview:渡辺 鈴子

atelier reiデザイナー /アーティスト
今回はYARNのインナーウェアをデザインするアトリエレイの渡辺鈴子さんにお話をお聞きしました。

今日はよろしくお願いします。自身についてバックグラウンドを教えていただけますか?
名古屋のファッション専門学校を卒業して、岐阜の企画会社に就職しました。その後、名古屋でセレクトショップとショップのオリジナルブランドを展開する会社にデザイナーとして勤め、オリジナルブランドのデザインをしていました。そこを辞めてからはフリーランスデザイナーとして活動し、四年前に『アトリエレイ』をオープンし今に至ります。

「アトリエレイ」でのお仕事をお話頂けますか?
アトリエレイは洋服のお直しを主軸にしています。 お客様にアトリエに来てもらって、ひとり一人ご要望を丁寧にお聞きして、お直しを楽しんでもらえることを目指しています。 洋服を長く着てもらうこととして提案するリメイクですが、袖や丈をお直しするだけで印象が変わります。その服でどういう気持ちになれるかってところに服の力があるって思っていて、自分の服は自分の好きなようにしていいんじゃない?って思うから、自由な発想でご提案します。デザインによっては切りっぱなしで良いこともあるし、そっちをオススメすることもあります。お直しの常識じゃないところがリメイクの面白さだと思っています。

新しい生地を買って、新しい服を作る事っていうのが一般的ですけど、リメイクはあるものをどうやって生かすかと、全く違った観点があります。どう言う風に料理するか、着る人と話をしながらつくり上げるところが、顔の見えない服づくりと違うところです。同じコートでも着る人によって色んなシルエットになるのは分かるんだけど、なんかしっくりこないって人がお直しに持ってくる。そんなお客様にここをこういう風に変えたらいいんじゃないですか?ていうご提案をすると、なるほどと納得される。お客様は新しく買った服がしっくりしないと分かっても、何がいけないか分からない。じつは原因は首のあきだったねとか、それぞれ異なるんですけど原因を見つけることができれば良いなと。

ちょっとした事でバランス感が変わったり、洋服をつくるとき型紙をミリ単位で線を引くんですけど、でもやっぱり動くもので、着る体型も違うから、ミリ単位でどこまでこだわることが大切かをいつも考えます。職人気質なのかもしれないけれど、こだわるべきところは、とことんはこだわる。でも出来上がってお渡しした後は自由。着る人の自由な気持ちにお任せします。

鈴さんのこだわりは、YARNのデザインにも活かされていますね。 メリノウールという素材に触れて感じたことを教えてください。
メリノウールの機能性が他にはない魅力がありますね。私は綿も麻もウールもシルクもポリエステルもアクリル、素材は何でも好きなんです。それぞれ特徴があってメリットとデメリットがあって、使い分ける事をしています。メリノウールはとても優れた機能があるので、機能を第一に最大限活かせるものをと、取り組み始めました。インナーとして扱う極薄のメリノ生地は身近な素材ではなかったので、あれこれリサーチしました。様々なメーカーのメリノウールの下着を取り寄せて、まずは自分が着てみる。山登りをしている友人と話していたら、山登りにメリノインナーは当然でしょって言われて、そうなんだって知りました。メリノを知ってる人はすごくよく知っている。でもあまり一般の人は知らない素材。どうしてだろうって思いました。日本はシルクの下着が重宝がられてるところはないですか? シルクには高級なイメージがありますよね。日本の素材として昔から蚕でつくられてきて馴染みがある。ですから取り掛かる前にまずは、あれこれ試行錯誤してみてメリノウールの良さを自分なりに形にしようと思ったんです。

どんな気持ちでデザインしているのか教えてくださいますか?
洋服は楽しむものとしてつくるので、それが人の力になる。気持ちを高めることも落ち着かせることもできるし、服にはいろんな役割があります。私は、服の力をとても信じていて、じゃあ下着の力ってなんだろうと考えた時、見えないからどうでもいいと思うのではなく、見えないところを気にかけることで、どういう風に心が変わるのか?ということに興味がありました。それが表に出る、心にも顔の表情にも。下着が変われば、服を選ぶときの雰囲気も変わるかもしれない、そんな風に表面を支える力があると思うんです。YARNの下着を着た気分で洋服屋さんに行ったらこれまでと違う服を買うかもしれない、とか。

YARNのインナーは安いものではないけど、そこには物語がある。その価値観を裏切らないように、どういうデザインをしたら良いか 心がけなければいけないと思っています。つくって終わりではなくで、どうやってYARNを届けるかもいつも真剣に考えています。欧米ではウールは生活の中の身近な素材、あまり馴染みのないニュージーランドのメリノウール素材を、日本にどう届けてゆくか。そこがひとつのチャレンジだったりします。

今のファッション業界における、エシカルやサスティナブルな動きはどう捉えてますか?
今の時代、サスティナビリティや動物愛護は大切な事で、毛皮や革製品をどうしていくかの課題がありますね。最高品質の革製品で世界的に有名なエルメスは、伝統を受け継ぐ優れた腕を持つ職人を「これもサスティナブルだと」エルメスなりの解釈の仕方をして職人をフューチャーし、各分野に携わる職人すべてがそうであると発信をしています。ビックメゾンも全て何十年後かには、再生可能な資源でつくることをかかげている。そういうことを消費者までちゃんと伝えるということも大切ですよね。

世の中には服も下着もいっぱい溢れているけど、価格を抑えるため、ほとんどが外国で安い賃金でつくられています。その人たちの暮らしはどうなっているのだろう?とか考えます。世界中の人が食べ物に困らなくて、屋根のある所であったかく眠れてということに繋がらないと。全て繋がってるって事も意識して、ものづくりをしていきたいなと思います。

つくり出したものを無駄にしたくないっていうのがあるから、YARNでは裁断の端切れも全部捨てないでストックしておいてます。オリジナルでハーブをブレンドして虫避けのサシェにしたり、 マスクをつくったりしています。最後まで生地を余すことなく形にすることをしたい。つくる側はもっと責任のもてるものを、つくらなければいけないと思っています。世界は変えられないけど身近なことなら変えられる。そこから変えることが、世界を変えることにつながると信じています。