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2024.08.14
Interview : Made in Japan ソックス編
今回は、YARNのメリノソックスのモノづくりを担っていただいている昌和莫大小(しょうわメリヤス)株式会社 代表の井上さんと技術責任者の能丸さんにお話をうかがいました。 会社の概要を教えてください 昌和莫大小株式会社は、1935年に創業して89が年経ちます。靴下を生業としておりまして、今は「OLENO」という自社ブランドでスポーツやアウトドアに特化した機能性ソックスを生産しています。従業員は13名と小規模ながら非常に活発に事業活動を行っております。 YARNのモノづくりにおいて、どこに難しさがありましたか? YARNの商品は糸が細いため、編み機を選定しないといけません。生地面や風合いの部分で一番適正な商品にするために、最新鋭の編み機を使用しますがその選定にはかなり神経を使います。安定したモノづくりができるように専用の機械を調整したり、柔らかい風合いを実現するために準備したりってするところです。YARNのメリノウールの糸は、非常に安定性の良い、高いグレードの糸だと思います。素材という点に関しては、私たちは非常に安心して安定的な生産ができると感じています。 糸の安定性というのはどういう意味ですか? 糸むらがあるような安定していない糸を使用してしまうと、同じように編んでも昨日と今日、右足と左足とで寸法が変わるのです。どんな時でも同じサイズ、同じ規格にすることが品質管理の上では大切です。寸法の測定頻度を高めることで品質を安定させることもできますが、そもそも糸むらがあるとどれだけ努力をしても良い品質の商品にはならないのです。そのためには糸むらのない、安定した糸を使うことがとても大切になります。 靴下にメリノウールを使う良さついて教えてください。 私たちもウールの靴下を推奨しています。日本ではウールは冬ってイメージがあって、夏にウールがピンとこられない方が多いですね。綿は汗を吸うのですが保持してしまうので、どうしてもジトジトします。ウールは綿と比べると肌がサラサラに感じて、長時間履いても非常に快適に過ごせます。トレッキングやハイキングをされる方の靴下がウールなのは、長時間歩いてもサラサラで快適に過ごせるからです。足が蒸れることによるトラブルが発生しにくいのです。 靴下づくりについて教えてください。 靴下づくりを長くやっていますけが、今でも非常に難しいです。靴下に求める価値は人によって違いますし、こういう靴下が一番の正解っていうものがないのです。だからユーザーさんに合わせて靴下をつくります。過ごされるシーンによっても価値が変わってきます。くつろぎたい時はゆったりとして、ふんわり包み込まれる靴下がいいですし、仕事の時に少し締めつけがないと、ずれて作業がしにくかったりしますとトラブルにもなります。スポーツであれば走るのか、球技をするのかでも求められる機能が変わります。私たちは培ってきた技術と経験を活かして、また機械ができることを把握して、シーンに基づいて機能を靴下につくり込みます。「ユーザーさんが求める靴下をご提供する」ということに徹する。それが私たちの靴下づくりです。 YARNのメリノソックスのどこを工夫していますか? 靴下のつま先は、通常ミシンの縫い山ができて、どうしてもゴロついてしまうんです。YARNのメリノソックスは最新鋭の編み機を使っているのですが「自動リンキング」という編み方ができるため、フラットな状態で編みあがります。つま先のゴロツキ感がゼロになる履き心地良い商品に仕上げています。 YARNの今後に期待することはありますか? YARNはメリノウールで非常に着心地の良いインナーウェアをつくられています。私たちもウールを推奨していますし、靴下とインナーは非常に共通点があります。今後もウール素材で良い商品を開発して、YARNや私たちの想いを皆さまに広げてゆければと思います。ウールは自然に還りますし、冬は非常に暖かい、夏は涼しいってことを実感していただきたいです。もっとウールが広がってゆく将来を描きながら、YARNと一緒に良いモノづくりを今後も続けていきたいと考えています。 -
2024.08.10
Interview : Made in Japan 染色、風合い加工編
interview:株式会社 艶金 今回は、YARNの生地への染色を担っていただいている株式会社艶金にてお話をうかがいました。 会社の概要と染色の工程を教えてください。 私たちは洋服に色をつけることを仕事としている会社です。特にご家庭のリラックスウェアの素材に色をつけています。 私たちの会社に届いた生地に工場で色をつけていくのが染色工程です。生地を洗って染色して、また生地を洗い直して余分な染料を落すことをした上で仕上げます。染色後は濡れた生地から水を落とすため、脱水機にかけて余分な水分を取ります。その後に熱を当てて乾燥させる工程に入ります。これで染色工程は一通り終わるのですが、この段階でお客様の指定色に仕上がっているかを検査します。検査で合格したもののみ、その後の「風合い加工」という工程に入ってゆきます。 生地は染めただけでは、肌触りや着心地が良くない状態ですので、良い柔らかさや風合いを整えてゆきます。その工程の一つに柔軟剤を生地につけていく樹脂加工があります。この加工機によって生地をソフトにしたり、撥水性や吸水性をつけたり、様々な機能を付与することをしてゆきます。 その後、表面をもっと綺麗にするためにプレス加工で生地を押さえてゆきます。圧力と熱をかけて生地の表面をフラットにします。張りを出してドレープをつけるようなこともその加工機でしてゆきます。 最後の検反では生地に傷がないか、色や寸法が正しく上がっているかを検査することで最終の生地が仕上がります。 YARNとの仕事の難しさについて教えてください。 今回、生地の生産を依頼されて、YARNの商品において一番心がけているところを確認しました。やはりお客様に着ていただいた時に、すごく肌触りが良く、着心地の良いものをつくらなければいけないと感じました。 ウール素材なかでも今回使っているスーパーエクストラファインはとても細い糸で、肌触りの元々良い生地です。しかし、染めるとどうしても一度生地が荒れてしまってカサカサとします。それをYARNの求める着心地のよいモノにしていくこと、同時に洗濯を頻繁にするインナーウェアですので、洗濯への耐久性や、縮みとのバランスを取らなければなりません。生地は固めれば固めるほど安定するのですが、柔らかく、肌触りよく仕上げようとすれば、生地の安定性は低くなります。縮みも少なく、洗濯耐久性も確保しながら、YARNの求める肌触りをつくることが非常に難しかったです。生地のバランスですね。物性を安定させるのには限界があるので、生地を仕上げる縦横のバランス、柔らかさと硬さのバランスを整えることで両方の要望に応えています。そこが一番難しく苦労した点です。何度も繰り返しテストして、どの工程を通すことでバランスが取れるかを確認し、最終的に現在の生地になりました。 出来上がった生地を見ていかがですか? 世の中にはすごく良い原材料を使っても、そのよさが十分発揮できていない生地がよくあります。今回YARNの生地は繊度の良い細い原料を使っていて、染色の工程を通るとどうしても固くなります。そこを注意してつくらせていただいた結果、元々原料が持っている良さを100%以上引き出せた生地になったと思っています。 YARNの活動についてどんな印象をお持ちですか? 繊維業界で仕事をする中で昔から常に思っていたのは、ウールという素材はもっとたくさん活躍する場所があるはずだと思っていました。昔はサマーウールと言って、夏にもウールが活躍していたのですけれど、最近はウールは秋・冬の寒いときだけという使い方になっています。肌着についてもそうです。昔はウールの肌着も多かったのですが、最近ではほとんど見なくなってしまいました。 YARNはウールの良さを分かっていて、かつ天然素材で生分解し循環できる素材ということで注目されて、自然にサスティナブルなことが広がることをされていることにとても共感します。YARNはニュージーランドで事業をされていて、野鳥の保護もしています。自然を保護することは、地球に生きている人はみんなしなければいけないことなのに、ビジネスや経済、日常の生活を考えるとなかなかそれができていない。私たちもYARNと同じように、自然に還った生活にみんなが気づいてくれるように、自分たちも活動していきたいと思います。 YARNもさらに活動の幅を広げてもらうことが、より良い地球に変えていける一歩だと思います。私たちも手伝いますので、ぜひ継続してほしいなと思います。 -
2024.08.05
interview:Made in Japan 生地作り編
今回は、YARNの生地づくりを担っていただいている大橋ニット株式会社の大橋さんにお話をうかがいました。 会社の概要を教えてください。 大橋ニット株式会社は素材となる糸を提供いただいて、糸から生地にする工程を担っています。糸には綿やポリエステル、ウールと色々なものがあるのですが、それらを組み合わせることによって、用途に応じて様々な生地に仕立ててゆくことを担っています。 丸編みという製法について教えてください。 手で編む編み物のイメージに近いです。それを機械に置き換えてやっているのですが、ループを連続させてゆきます。ループがあってその次の糸がまたループがあってというカタチで、ループを繋げてゆくのが丸編みニットです。 メリノウールの生地をつくることの難しさについて教えてください。 YARNの生地をつくるにあたって、メリノウールの糸が非常に細いことが最初のハードルでした。ポリエステルの場合は、同じ番手(太さ)をつくったとしても、糸に伸度があって編めてしまうのです。一方で、メリノウールは天然の素材なので、全部が均一の品質ではないのです。途中にちょっと硬いところがあったり、細いところがあったりするのがウールです。それを均一のテンションをかけて、いかにムラがないようにするか、穴にならないようにするかが難しいところです。テンションのかけ具合によって生地の善し悪しが決まってきますので、そこを問題なく編むことに苦労しました。 試作を繰り返してゆく中で、苦労したことはありますか? 編む機械も密度の粗いものから、細かいものまで様々あります。YARNは見た印象といいますか、表面も美しいものをつくりたいということで、私たちの所有する機械の中で、できるだけハイゲージ(編み目が細かく密度の高いもの)を使用しています。ハイゲージを使用することによって、編むことに関しては、実はもう一歩ハードルが上がります。そのハードルを何とか越えようと様々な調整をしながら、やっとここまで来ました。 メリノウールという素材を扱ううえで気を遣うこと、難しさはありますか? これまで私たちが扱っていたウールは、すごく太いものが多かったんです。通常であれば48双糸とか、60双糸をメインにやっています。基本的には双糸よりが多くて、それは単糸は編みづらいからなんです。編むまでに糸が切れてしまったり、編んでから穴が開いたりってことが発生しやすい。YARNは60単糸なのですが、それをいかに編めるかということで機械のセッティングを1から見直しました。 メリノウールの生地の風合いをどのように感じられましたか? あくまで生機(染色や仕上げ加工をする前の布生地)の段階ですけれども、すごく薄くて軽くていいものができたなと思っています。また仕上がりを見せていただいて、自分でもメリノウールのTシャツ着てみたのですが、やっぱり違うなというか、気持ちいいですね。 YARNの活動についてどんな印象をお持ちですか? 私たちは糸から生地にする工程を担っているのですが、この生地が最終何になるのかってことが、全く分からないところもあるんです。そういった中で、今回工場まで来ていただいて、こういう形でつくっているということを、僕たち技術者も含めて現場に来て見ていただくことはすごくありがたいことです。一緒にモノをつくっていくっていうのが分かっていただいてて嬉しいです。