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2024.07.22
interview:Made in Japanのクオリティ 縫製編
interview:縫製工場 株式会社アタゴ 今回は、YARNのRotoシリーズ・Kauriシリーズのモノづくりにおいて 裁断・縫製・仕上げ工程を担っていただいている株式会社アタゴの林さんにお話をうかがいました。 会社の概要を教えてください 株式会社アタゴはアパレル製品のOEMメーカーです。1927年に創業し、もうすぐ100年の節目を迎えようとしています。 創業当初は軍手・軍足などの手横編み製品の製造・販売からスタートし、インナーウェアの生地開発から縫製までを一貫して手掛けるようになりました。現在ではスポーツ・アウトドアなどの機能性ウェアの製造へも事業を展開しています。インナーウェアに関しては長い間、製造に携わっているため、数々なブランド様とご一緒に活動させて頂いております。 YARNのモノづくりにおいて、難しさはどこにありましたか? 上質で柔らかなメリノウール生地を扱うのは非常に難しかったです。裁断工程においては生地を積み重ねてカットする際、生地にテンションがかからないようにしながら、ゆっくりとしたスピードで慎重にカットする作業が求められました。 縫製工程においても柔らかな生地は非常に縫うのが難しく、少しの加減の違いで仕上がりが変わってしまいます。YARNの優れたデザインと品質を損なってはいけない。その思いで指先の感覚を研ぎ澄まして縫製に取り組みました。 経験のある縫製職人でも苦労するほど、細心の注意をはらった作業が求められました。 高い品質を実現するために何をしていますか? まず大切なのは、お客様とのコミュニケーションを密にすることです。より良い製品に仕上げられるように打合せを何度も行っております。ここを怠ると僅かな認識の違いが生じ品質に影響を及ぼします。試作段階では、量産時に問題がでないかのチェックを何度も行いました。 何度も試作しながら部分縫いを確認し、問題がないかの検証を行います。縫いにくい仕様や、綺麗に仕上げられない部分があればフィードバックさせていただき、よりよい方法を検討・提案させて頂きました。時には要望に対して「できない。」という返事をさせて頂く事もあります。 それは長年培ってきた経験の中で上手くいかないという事がわかったうえでしっかりとご説明し、アタゴとしての改善方法を提案しています。もちろん製品検査にも力を入れております。経験ある検査員が生産で縫い上がった製品の外観・寸法の細部に渡り細かくチェックし、不良品が流出しないように検査をしています。 YARNとの仕事はいかがですか?どんな印象をもちましたか? 商品企画に凄くこだわりを感じました。デザイン面では着用感をすごく気にされており、何度も調整を行った事を記憶しています。インナーウェアは肌に一番近い部分に着るものゆえ、快適性を追及し、より良い品質のモノをつくり上げようする強い想いを感じました。 YARNのサスティナブルな活動についてどう思いますか? メリノウールは自然由来の素材ですし、バクテリアによる分解速度も速いので廃棄する際の環境負荷も少なく済むサスティナブルな素材です。YARNのモノづくりは素材のみならず、生産工程の全てで環境に対する配慮が行われていて、本当のサスティナブルな製品はこういうことかと感銘を受けました。 YARNの今後に期待することはありますか? 上質なモノを長く着るということは、消費者が実践できるサスティナブルな活動かと思います。それが実現できるYARNの商品生産に携わらせて頂いていると私たちは考えています。日本のアパレル市場にファストファッションのような大量生産・大量消費ではない価値観を提案し続けてほしいと願っています。 -
2024.04.20
Interview : エディター 堺あゆみさん
エディター 堺あゆみさんにお話を伺いました。 ① 堺さんのこれまでのご経歴や、現在の活動を教えてください。 大学3年生の時にバングラデシュで教育普及活動をしているNGOに参加しました。アジア最貧困の状況を現地の小学校で目にして衝撃を受けました。経済的に豊かになるためには、教育と自立が大切あることを痛感したんです。 困難な状況にある国のポジティブな面を伝えることで関心を持ってもらって、結果的に社会貢献になるようなドキュメンタリー映像をつくりたい、とテレビ局を志望しましたが内定を得られず挫折。旅行代理店に就職したのですが、やはり伝える仕事がしたいと編集業界に転職しました。ハードな仕事でしたが、寝なくても辛くないほどおもしろくて、雑誌編集の仕事にのめりこみました。その後、2回転職をして大手出版社へ採用されました。管理職になり、webの部署への異動もあって、仕事と子育ての両立に限界を感じて退職。フリーランスの編集者になりました。 40歳直前で次女を出産後、体調不良が続き、やり残したことはないかと人生の棚卸をしました。学生時代の夢であった途上国支援にかかわることをしたいと改めて思っていた頃、訪れたパレスチナで「フリーカ」という古代穀物に出会いました。未経験ながらフェアトレードのオーガニックフリーカの輸入にチャレンジしました。伊勢丹百貨店のビューティーアポセカリーでの販売を実現し、メディアにも取り上げられました。おいしくてヘルシー、結果的に支援になると学生時代からやりたかった無理のない持続可能な途上国支援を実現できたんです。たくさんの素敵な人々との出会いを経験し、人生が変わりました。 ② 堺さんは生活の面でも、仕事の面でも、 「自分らしく生きること」を大切にしている気がし ますがいかがですか?何か大切にしている考え方や、実践していることはありますか? 家族のため、友人のため、と今まで誰かのために生きてきた気がします。自己肯定感が低いせいか、自分の意見をなかなかはっきり言えず、頼まれごとを断ることが苦手でした。ですが40代後半で大病を患い、5年&10年生存率のデータを見た時に、死が一気に身近になりました。「残りの人生はやりたいことをやって生きていこう、もっと自分軸で生きよう」と決意しました。お金を使い切って死ぬぐらいの気持ちで、あまり先を考えず自分のためにお金を使いまくっています(笑)。行きたいところへ旅をすることや、肌に触れて心地よいYARNのインナーウエアを着ることもその一つ。これからは「私」をもっと大切にして生きていきたいと思っています。 ③ 女性起業家として多面的な活動をされています 。何か苦労したことや、今挑戦していることはありますか? お金の話をするのが苦手でした。儲けるということに何かきれいじゃないイメージがあって。かっこつけていたのかもしれません。でも、ちゃんと利益をあげないと事業は続かないことを痛感しました。商品に付加価値をつけ、きちんと対価をいただき、利益を出してサスティナブルな事業にする。それが結果的に誰かのためになるのだとわかりました。現在はクライアントに対してきちんと対価を請求できるようになりました。その分、きちんと貢献することでお互いに気持ちよく仕事ができている気がしています。 ④ 日本と世界をつなげる役割や、サスティナブルな活動では YARN との共通点を感じます 。 今後どんなことを目指していますか? パレスチナのおふくろの味であった古代穀物「フリーカ」を日本ではじめて広めることができたように、世の中に埋もれているモノ·コトを発掘し、独自に編集して付加価値をつけ紹介·発信する。今後もそのようなことができたらと考えています。また、マンションやビルの解体などで処分される運命にある、昭和の貴重な建具などを救い出し、付加価値をつけて次世代へつないでいくプロジェクトも準備中です。 ⑤ YARN を知ったきっかけを教えてください。その時の印象はいかがでしたか? ニュージーランドでYokoさんとの出逢いがきっかけです。最初はニュージーランドのほっこりしたイメージだったのですが、ホームページを見て「なんて洗練されていてセンスがいいんだ!」と感激しました。 ⑥ YARN を実際に着てみた感想はいかがでしたか? ウールなのにちくちくしない、は本当でした!そして本当にあったかくて、気持ちがよかったです。デザインも素敵で身に着けていてうれしい気持ちになります。特にお気に入りはキャミソールです。色違いで揃えています。 ⑦ 様々なブランドがある中で、YARN の魅力はどういったところにあると思いますか? 機能性とデザインを両立しているところです。ニュージーランドのウール、日本の縫製、サステナブルな取組み、唯一無二だと思います。2人の子供をかかえながらたった一人で異国で起業し成功した、というYokoさんの人生ストーリーもとても魅力です。 ⑧ YARN オーナーの陽子についてどんな印象をもたれましたか? 最初は、おっとりおとなしそうにみえましたが、芯が強くてポジティブな女性だとわかりました!(笑) いろいろなことをすごく深く考えていらっしゃって、あきらめない粘り強さがあって、話していてとても楽しい!尊敬するビジネスウーマンです! ⑨ YARN の取り組むサスティナブルなモノづくりをどのように思われますか? 素晴らしいと思います。サスティナブルだから買うというよりも、気持ちいいから、デザインが素敵だから買う。結果的にサスティナブルという無理のないところに私も共感します。 ⑩ ここ数年で日本にもサスティナブルなファッション、モノづくりが、少しずつ浸透して きつつありますが、どう感じていますか? サスティナブルという言葉がひとり歩きしたり、ファッション化されて使われていることに違和感を覚えたこともありますが、人々の関心が高められるのであればどんな方法でもいいのかなと今は思っています。サスティナブルという言葉がなくなるぐらい、当たり前の世の中になるといいなと思います。昨年の春にニュージーランドを訪れて、人々の生活に当たり前に浸透していることに感銘を受けました。 ⑪ YARN の将来の可能性や、今後に期待することはありますか? YARNのインナーを身に着けたいという価値観の人がどんどん増えていくといいなと思います。また、コミュニティでみんなの声を集めた商品開発や、どこかのブランドやデザイナーとの限定コラボアイテムなど、さらにワクワクすることがあっても楽しそうですね! 堺さんとのインスタライブ対談 (こちらをクリックください) アーカイブをご覧いただけます。 ぜひ御視聴ください。 -
2024.01.26
interview:メリノ・リッジ農場
マックナイト夫妻 YARNが採用するZQメリノウール。 今回はニュージーランドでメリノ羊を育てている牧場「メリノ・リッジ」を経営するマックナイト夫妻にお話をうかがいました。 農場について教えてください。 ここメリノ・リッジ農場は広さが5,500ヘクタールで、約18,000頭のメリノ羊を飼育しています。 8月下旬から始める毛刈り作業は約10日間かかります。4つの作業場を使用して、1日に約900頭の毛刈りをします。 8月に毛刈りを行うのは天気がよいからです。(8月下旬はニュージーランドの初春)。 あとは10月にメスの羊は出産するため、出産前に十分にコンディションを整えるため、2か月前に毛刈りを行うのです。 別の場所にあるノースバーン農場では、ここメリノ・リッジ農場より多くのシェルターがあって、 悪天候でも、全ての羊たちが雨風を防ぐことができるよう十分な広さが確保されています。 ノースバーンには合計9つの毛刈りの作業場があります。 高品質なウールをつくるため、どのようなことをしていますか?? 一年を通して、羊たちに均等に飼料を食べさせることが大切です。 子羊たちは小さな群れに分かれますが、子羊のうちはしっかりとミルクを飲んでいることを気にかけていなければいけません。 断乳後には草をたっぷり食べていることを確認します。子羊が生まれる春には草がよく生えるので餌が豊富なんです。 冬には雪が降ったり凍結したりすることがあるので、夏のうちにサイロを作っておきます。 サイロには穀物や作物が含まれ、必要な飼料を確保しています。ウールの品質と羊たちの管理には強い関係があります。 一年を通して羊たちを世話して、適切に管理することは私たちの責任です。 もちろんウールは私たちの大切な収入源です。 丁寧に気を配って飼育しなければ、YARNにふさわしい品質のウールにはなりません。 どのぐらいの細さのウールを目指していますか? YARNの製品には、私たちが生産している16-17ミクロンが合っています。 肌に触れるものは、柔らかければ柔らかいほど(細ければ細いほど)刺激が少ないのでいいとされています。 ですがあまりにも細かくすると羊の健康に問題が生じやすく、飼育が難しくなります。 私たちは飼育面と製品のクオリティ面から、16-17ミクロンの細さぐらいが、直接肌に触れる生地に最適だと考えています。 どんなことを目指して活動していますか? 私たちは常に昨年よりも良いウールになるよう努力、改善しています。 今年の結果をうけて、来年に向けて調整できるようにしています。 たとえばウールのクリップ(刈り取られたウール)が良好で欠陥や問題がないことを確認し、 部分的に柔らかい箇所がある場合はなぜ柔らかくなったのかということを考えます。 ウールに欠陥が生じた時期を振り返って、何に問題があったかを特定します。そして翌年には、そのことを念頭に入れて修正・改善してゆきます。 ZQ のウール基準に準拠することは重要ですか? ZQは世界トップレベルです。私たちはその基準を満たし認定をうける必要があります。 ZQプログラムに賛同し、最初からこのプログラムに関与できて本当に嬉しいです。 長い間続いているプロジェクトですし、知名度のあるブランドが私たちのウールを扱うわけです。 実際に世界をリードしていますし、それは私たちの目指すところです。 ブランドパートナーとつながっていることは、どう感じますか? 素晴らしいことだと思います。ZQプログラムに加入する前は、ウールを出荷した後は、それがどうなってゆくのかを知ることができませんでした。 でも今は買い手となるブランドパートナーと直接連絡が取れていますし、陽子さんやYARNとの直接のつながりができています。 それはとても特別だと感じます。 陽子さんとYARNと一緒にこうして仕事ができて、自分たちのウールがどういった製品になるのかちゃんと分かるのは光栄なことです。 昔はそこまで重視されてこなかったかもしれませんが、今はトレーサビリティがますます重要なことになっています。 仕事をしていく上でブランドパートナーとの関係はとても大切で、トレーサビリティに価値があると思っています。 私たちのウールがどうなっているかを見る機会があるたびに、YARNのように着心地がよく美しい製品を見るたびに、 私たちは刺激をうけて、この仕事を続けるモチベーションになります。 価値観が同じブランドと協力することは重要ですか? 私たちが自分たちの基準を持っていたとしても、最終製品がどこに行くかが分からなければ意味がありません。 今はニュージーランド・メリノ・カンパニーを通じて、私たちのウールが具体的にどこに行くかを正確に把握しています。 消費者やブランドが、私たちの目指す方向や提供できる価値観に共感・一致するよう願っています。 私たちはYARNのお客様に、製品がどこで始まり、どこで生まれるかを知ってもらいたいと思っています。 メリノウールという素晴らしい機能性が備わった、生分解性がある持続可能な素材が、美しい衣類を作り上げていることを、私たちはとても誇りに思っています。 きっとこれは物語の一部でしょう。 YARNはとても素晴らしい製品を生み出しています、その旅は羊たちから始まります。 ここは私たちにとってすべての始まりの場所です。 >>ドキュメンタリー映像はこちら