VOICE
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2021.08.17
interview : 兼松春実
「棲」編集者 / ライター YARN を実際に着ていただきました、お客様の声をご紹介する Userʼ s voice。今回は、YARN を愛用くださっている、住まいと暮らしを提案する雑誌『棲(すみか)』の編集長で、ライター の兼松春実さんに、お話をうかがいました。 今日はよろしくお願いします。春実さんのバックグラウンドを教えていただけますか? 1991 年から『建築ジャーナル』で書く仕事をはじめて、建築やまちづくり、家の取材などを主にしてきました。その後名古屋の大正時代のお屋敷だった「橦木館」にてカフェ、セレクトショップ、ギャラリーを運営していました。2003 年頃からフリーの編集者として、本をつくったり、書く活動を主にしています。2009 年から約 10 年間、『棲』という雑誌を発刊していました。 『棲』という雑誌で手がけていたことをお話いただけますか? 『棲』は住まいのことはもちろんですが、人が生きる上で関わる全ての事を取り上げたいと思っていました。安心できる食のこと、人生の終わりの迎え方、終末医療のこと、子どもを取り巻くことなどです。私は着ることも大好きなので、13 号の『「装う」の向こうに』という特集の際はYARN デザイナーのレイさんに取材させていただきました。 YARN を知ることになったきっかけは何ですか? YARN の主宰者である下山陽子さんに、私の夫が展覧会をしていたギャラリーレストランでたまたま出会ったのがきっかけです。帰りの電車の中でもずっとお話しして YARN のコンセプトに共感。その場ですぐにレギンスを注文しました。 YARN を実際に来てみていかがですか? YARN のメリノウールは着ていて本当に気持ちがいい 寒いときはもちろんですが、涼しくなったり暑くなったり気温の変化が大きい時期は最適だと思います。私はこれまで夏は綿や麻、冬はウールと言うイメージがあった。でもウールを素肌に直接着るという事を YARN に出会って知りました。メリノウールの温度・湿度の調整機能や、夏にも着られるということを知って、実際、初夏にも身につけて過ごしたけれどサラサラで気持ちがよくて驚きました。 YARN を知ってから下着のことを、もっと考えるようになりました。「着られればいい」の安ものって、すぐに伸びたりしてあまり着たくなくなる。でも、1、2 年で捨てるのもどうかと迷ったり。洋服も同じで、安くていいかもと思ったらぽんっと買って、クローゼットの場所をとっている。でも「ちょっとこれ違うな」と思う人が増えてきたというか、時代の流れが変わってきたように思います。ものを持つことの価値観。断捨離っていう言葉が流行っているのも、ものがありすぎてもそこに振り回される窮屈さがあるのかな。ストレス発散で買うのも悪くはないと思うんだけど、長く使えて、ほんとに満たされるものを着れば、服の数は少なくてもすみますよね。 ウールは世界的に見ればすごくポピュラーな素材だけど、YARN が使っているのは特別なニュージーランドのメリノウールということをちゃんと知ってもらいたいですよね。日本ではメリノがサマーウールという名前で昔から入って来てはいる。夏用のサラリーマンの高級スーツといえばポリエステル混合の生地が出る前は、メリノウールがスタンダードだった。その最高級の素材をインナーというカタチで着ることを、私たち日本人はほとんど経験していないから新鮮じゃないかなと思う。時間はかかるけどゆっくり伝わっていくのが、良い伝わり方なのかもしれない。とにかく着てみてもらいたいです。 今、私はフイア・ハーフパンツを愛用しています。それまでは日本の有名なブランドのショーツをはいてたんですよ。それでも別に心地悪くはなくて、何も意識もしてなかったはずなのに、YARN のハーフパンツをはいたら今まですごい違和感があったんだなと気づきました。私はお腹をすっぽり包み込むのが好きだけど、すっぽりのモノはいかにもといったデザインしかない。締めつけすぎず、だぶつきすぎずっていうのって、ほんと絶妙なサイズ感が必要。一日の中でも下着が動きによってくい込んだり、ゆるゆる過ぎたりも気持ち悪い。着ている人の動きを邪魔しない。ここを設計できるのはデザイナーさんの力ですね。冷房が効いているところでも、これを履いていれば安心できます。 YARN のショーツはリピートしてくださる方がすごく多いんです。はるみさんのようにショー ツ難民で、これというものに出会えてなかった方々が気に入ってくださって、少しずつ揃えたい とおっしゃってくれています。 フイア・ブラタンクトップも、冬場は毎日着ています。寝るときもパジャマの下に。暖かいし、楽だし。最近は化繊のものを肌に直接つけるのに抵抗があるようになってしまいました。いまは特にコロナで家にいるじゃないですか。 家にいるからどうでもいいんじゃなくて、家にいるからこそ、ちゃんと心地よく自分のこと労ってあげたい。そう考えたときに、YARN のインナーはぴったりだと思う。自分の身体、心が応えてくれるような豊かさ。 インナーウェアは、住まいのインテリアが人におよぼす影響と似てるところがあるのかなって。壁にクロスを貼れば安く済むけど、漆喰を職人さんに塗ってもらったら手間賃もかかるし、でも目には見えない心地よさがあるんですよ。私も引っ越す際に古いマンションを漆喰塗りにしたら、ほとんど結露もしないし、梅雨時もそれほどジメジメしないような気がします。目には見えない心地よさを感じ取れる人になること。体の声、心の声を聞いてあげてあげれば、こういうものを選びたいとなってくるのでは。 そんな人たちの力になれるものでありたいと言う願いでつくっています。 単に長生きすることじゃなくて、健全な心を持つためというか、前向きに生きるため、生き生きした人になるために、そんな人を応援するような服であり、家であり、食事であり。社会全体が良い気に溢れていてコロナにも打ち勝つみたいな。私たち一人ひとりが何を買うか、何をチョイスするかで、社会がすごく変わってくるから、そういう意識を持って生きたいですね。 今後の YARN に期待することはありますか? ものを通してある価値観を広めるような、YARN のものづくりの姿勢をたくさんの方に知っていただけるといいですね。そしてさらにたくさんの方に購入していただいて、もう少しだけ価格が手ごろなものになると(笑)うれしいです! -
2021.03.01
interview:マータ・ブッダ
テキスタイルデザイナー/織物作家 今回は昨年YARNの新商品「ふろしき」をデザインした、ニュージーランド在住のテキスタイルデザイナー・織物作家のマータ・ブッダさんにお話をお聞きしました。 -- 自身について、バックグラウンドを教えてもらえますか? ニュージーランドの首都ウェリントンを拠点にテキスタイルデザイナー、織物作家として活動しています。大学ではテキスタイルデザインを専攻し、紋様のデザインや手織物に関心があります。 -- 今の表現にどのようにしてたどりつきましたか?いつからアーティストになりたいと思っていましたか? 子供の頃から、物事の見え方や作り方にずっと興味を持っていました。小学校での最も影響を及ぼした思い出のいくつかは、本で見たもの、それらを解釈するために独自の方法で形にすること、そのプロセスはいつもクリエイティブであることでした。 アートへの興味を持ち続けて大学では美術学科に入学し絵画を専攻していましたが、1学期を終えてしばらく休学することにしました。また大学に戻ったとき方向性を考え直し、デザイン学科のテキスタイル専攻へ変更しました。テキスタイルに惹かれたのは大学内で最もクリエイティブな学部のように感じたからです。私が気に入ったのは物理的なプロセスで、デジタルで学ぶ教科は1つだけで、ほとんどが伝統的なパターンの作成方法をアナログな方法で学びました。最も人気のあるテクノロジーはコピー機でした。私がテキスタイルに惹きつけられたのは、学ぶべき多くのプロセスと、材料の探索と実験の機会があったからです。 私は自分自身を「アーティスト」ではなく「テキスタイルデザイナー」と言っています。アーティストの表現には責任を感じます。私のアート感覚はもしかして人々の求めるものに合わないかもしれない。「テキスタイルデザイナー」はもっと身近に自分を表現できると感じられたのかもしれません。 -- YARNとのコラボレーションでのインスピレーションや、デザインプロセスを教えてもらえますか? デザインに取り掛かるとき、その会社や人のことを理解する必要があります。これがデザインの出発点です。 YARNの世界観を私の直感で感じること、自然、誠実さ、ニュージーランドに根付くYARN、私はこれをニュージーランドの植物を通して表現したかったのです。 私の家の近くにはネイティブの植物が茂る小道がたくさんあります。木漏れ日(木々の間から溢れる光のダンス)の差し込む木々の中を歩くこと、これが今回のスタートポイントでした。いくつかの異なる植物のイラストのコンセプトをペイントや青写真などで作成しました。そこからヨーコが気に入ったものを選びデザインを展開していきました。最終的に、紙と墨汁を使用したジェスチュラル・ペインティングで、表現豊かなデザインにしています。マヌカ、シダ、コーウァイ、ホロエカ、アケアケ。これらは私の庭や近所で見つけたニュージーランドネイティブの植物で、私たちにとってなじみのある特別なものです。 ※ジェスチュラル・ペインティング身振りによる抽象絵画。紙やキャンバスに、顔料を注意深く塗らずに、垂らしたり、飛び散らせたり、汚しつけたりするような絵画の様式。具体的な対象を描いくというより、絵を描く行為自体が強調されたものになります。 -- ふろしきに印刷されているものを見てどう感じましたか? デザインが刷られた風呂敷をとても気に入っています。京都の工房での作業写真をヨーコに見せてもらった時にとても嬉しくなりました。いつか工房を訪ねてみたいです。私は、熟練の職人さんがもっている知識や技の量にいつも驚いています。彼らは伝統的な技術を継承していくためにはとても重要です。生地に印刷されるとデザインはさらに永続的なものになります。この伝統的な技法で自分の作品が印刷されるのを見ることができて光栄です。 -- イラストを見た人、ふろしきを使う人に、感じてもらいたいことはありますか? ふろしきというものは、実用的で、持続可能な、素晴らしいものです。みなさんがふろしきを日常で実用的に使うきっかけや再利用を促したり、使い捨ての包装や廃棄物について真剣に考えてもらえたら嬉しく思います。もちろん、長く愛されるデザインであることを願っています。 -- YARNやヨーコの活動について、どう感じていますか? ヨーコは素材と快適さに非常に敏感だと思います。YARNは繊細でクラシック、真摯で、身体によく、新鮮な感覚を生み出していると思います。居心地が良く快適ですし、私はキャミソールが大好きでほぼ毎日着ていますよ。 -- 今後やりたいことはありますか? 昨年は絵を描く以上に織り物・バッグ制作をしていたので、今年はバランスを取り直してパターンデザインの時間をつくってゆきたいです。 -
2021.03.01
interview:渡辺 鈴子
atelier reiデザイナー /アーティスト 今回はYARNのインナーウェアをデザインするアトリエレイの渡辺鈴子さんにお話をお聞きしました。 -- 今日はよろしくお願いします。自身についてバックグラウンドを教えていただけますか? 名古屋のファッション専門学校を卒業して、岐阜の企画会社に就職しました。その後、名古屋でセレクトショップとショップのオリジナルブランドを展開する会社にデザイナーとして勤め、オリジナルブランドのデザインをしていました。そこを辞めてからはフリーランスデザイナーとして活動し、四年前に『アトリエレイ』をオープンし今に至ります。 -- 「アトリエレイ」でのお仕事をお話頂けますか? アトリエレイは洋服のお直しを主軸にしています。 お客様にアトリエに来てもらって、ひとり一人ご要望を丁寧にお聞きして、お直しを楽しんでもらえることを目指しています。 洋服を長く着てもらうこととして提案するリメイクですが、袖や丈をお直しするだけで印象が変わります。その服でどういう気持ちになれるかってところに服の力があるって思っていて、自分の服は自分の好きなようにしていいんじゃない?って思うから、自由な発想でご提案します。デザインによっては切りっぱなしで良いこともあるし、そっちをオススメすることもあります。お直しの常識じゃないところがリメイクの面白さだと思っています。 新しい生地を買って、新しい服を作る事っていうのが一般的ですけど、リメイクはあるものをどうやって生かすかと、全く違った観点があります。どう言う風に料理するか、着る人と話をしながらつくり上げるところが、顔の見えない服づくりと違うところです。同じコートでも着る人によって色んなシルエットになるのは分かるんだけど、なんかしっくりこないって人がお直しに持ってくる。そんなお客様にここをこういう風に変えたらいいんじゃないですか?ていうご提案をすると、なるほどと納得される。お客様は新しく買った服がしっくりしないと分かっても、何がいけないか分からない。じつは原因は首のあきだったねとか、それぞれ異なるんですけど原因を見つけることができれば良いなと。 ちょっとした事でバランス感が変わったり、洋服をつくるとき型紙をミリ単位で線を引くんですけど、でもやっぱり動くもので、着る体型も違うから、ミリ単位でどこまでこだわることが大切かをいつも考えます。職人気質なのかもしれないけれど、こだわるべきところは、とことんはこだわる。でも出来上がってお渡しした後は自由。着る人の自由な気持ちにお任せします。 -- 鈴さんのこだわりは、YARNのデザインにも活かされていますね。 メリノウールという素材に触れて感じたことを教えてください。 メリノウールの機能性が他にはない魅力がありますね。私は綿も麻もウールもシルクもポリエステルもアクリル、素材は何でも好きなんです。それぞれ特徴があってメリットとデメリットがあって、使い分ける事をしています。メリノウールはとても優れた機能があるので、機能を第一に最大限活かせるものをと、取り組み始めました。インナーとして扱う極薄のメリノ生地は身近な素材ではなかったので、あれこれリサーチしました。様々なメーカーのメリノウールの下着を取り寄せて、まずは自分が着てみる。山登りをしている友人と話していたら、山登りにメリノインナーは当然でしょって言われて、そうなんだって知りました。メリノを知ってる人はすごくよく知っている。でもあまり一般の人は知らない素材。どうしてだろうって思いました。日本はシルクの下着が重宝がられてるところはないですか? シルクには高級なイメージがありますよね。日本の素材として昔から蚕でつくられてきて馴染みがある。ですから取り掛かる前にまずは、あれこれ試行錯誤してみてメリノウールの良さを自分なりに形にしようと思ったんです。 -- どんな気持ちでデザインしているのか教えてくださいますか? 洋服は楽しむものとしてつくるので、それが人の力になる。気持ちを高めることも落ち着かせることもできるし、服にはいろんな役割があります。私は、服の力をとても信じていて、じゃあ下着の力ってなんだろうと考えた時、見えないからどうでもいいと思うのではなく、見えないところを気にかけることで、どういう風に心が変わるのか?ということに興味がありました。それが表に出る、心にも顔の表情にも。下着が変われば、服を選ぶときの雰囲気も変わるかもしれない、そんな風に表面を支える力があると思うんです。YARNの下着を着た気分で洋服屋さんに行ったらこれまでと違う服を買うかもしれない、とか。 YARNのインナーは安いものではないけど、そこには物語がある。その価値観を裏切らないように、どういうデザインをしたら良いか 心がけなければいけないと思っています。つくって終わりではなくで、どうやってYARNを届けるかもいつも真剣に考えています。欧米ではウールは生活の中の身近な素材、あまり馴染みのないニュージーランドのメリノウール素材を、日本にどう届けてゆくか。そこがひとつのチャレンジだったりします。 -- 今のファッション業界における、エシカルやサスティナブルな動きはどう捉えてますか? 今の時代、サスティナビリティや動物愛護は大切な事で、毛皮や革製品をどうしていくかの課題がありますね。最高品質の革製品で世界的に有名なエルメスは、伝統を受け継ぐ優れた腕を持つ職人を「これもサスティナブルだと」エルメスなりの解釈の仕方をして職人をフューチャーし、各分野に携わる職人すべてがそうであると発信をしています。ビックメゾンも全て何十年後かには、再生可能な資源でつくることをかかげている。そういうことを消費者までちゃんと伝えるということも大切ですよね。 世の中には服も下着もいっぱい溢れているけど、価格を抑えるため、ほとんどが外国で安い賃金でつくられています。その人たちの暮らしはどうなっているのだろう?とか考えます。世界中の人が食べ物に困らなくて、屋根のある所であったかく眠れてということに繋がらないと。全て繋がってるって事も意識して、ものづくりをしていきたいなと思います。 つくり出したものを無駄にしたくないっていうのがあるから、YARNでは裁断の端切れも全部捨てないでストックしておいてます。オリジナルでハーブをブレンドして虫避けのサシェにしたり、 マスクをつくったりしています。最後まで生地を余すことなく形にすることをしたい。つくる側はもっと責任のもてるものを、つくらなければいけないと思っています。世界は変えられないけど身近なことなら変えられる。そこから変えることが、世界を変えることにつながると信じています。