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2023.07.02
夏こそウール、夏こそメリノ
澄んだ青空、さらりと乾いた風。メリノウールのように心地良い季節が終わり、いよいよ梅雨の話題が聞こえる頃となりました。 そのあとは夏へとむかう時期。 そして冬のものと思われがちなウールは、これからの季節こそ使いたい素材なのです。 肌着に使われる素材の特徴 市販されるアンダーウェアには、さまざまな素材が使われています。それぞれの長所・短所を比べてみましょう。 ・化学繊維(ポリエステル、ポリウレタンなど) 〇 安価で大量生産が可能。着色やデザインが容易にできるので製品化しやすい素材です。 縮みや変色がしづらいので洗濯に手間がいらず、安価で手に取りやすい素材です。 △ 温度と湿度のコントロールができません。非常に蒸れやすいので夏は暑く、冬は暖かいと感じますが実際は汗をためこみ、蒸れた状態が続いています。通気性がないため臭いが出やすく、汗ではりつき不快感につながります。 ・綿 〇 もっとも馴染み深い天然繊維です。大量生産ができ加工もしやすいので、低価格で製品化することができます。 優しい肌ざわりで汗をたっぷり吸い込んでくれ、肌が弱い人も安心して使えます。洗濯しやすく取り扱いが容易な素材です。 △ 汗を吸い込んでくれますが、乾燥させない限りは自力で放出することはできません。水分をしっかり溜め込んでしまうので、繊維内に満杯になれば蒸れに変わります。夏や洋服を着こんだときに、むっとした臭いがするのはそのためです。 ・麻 〇 耐久性が高く、丈夫で長持ちします。使うほどに柔らかさが出て肌馴染みがよくなります。汚れが染み込みにくく抗菌性が高い繊維です。 繊維長が短く熱を素早く放出することができ、繊維には空洞があって空気を含むため、保温性も持ち合わせています。 △ 麻は種類によって肌ざわりが大きく異なります。 ヨーロッパ産の麻(リネン)は光沢があり柔らかいですが、アジア産の麻(苧麻)はごわつきがあり、アンダーウェアには不向きです。繊維長が短いので、洗濯のたびに繊維くずが出て埃が立ちやすいです。 ・絹 〇 天然繊維の中でも人間の体に近い成分でできていて、静電気がおきにくいこと。また繊維長が長く繊維くずが出にくいこともあり、肌への刺激が非常に少ない素材です。 保湿性が高くしっとりとした肌ざわりで、繊維内の空洞で空気をため、保温力があります。 △ 保湿力が高いため、冬は暖かさを感じる一方、肌へ密着し夏は暑く感じやすいです。熱に弱いため摩擦が起きやすい場所から傷みが出やすくなります。またほかの素材に比べ高額といえます。 それぞれの長所を併せ持つ。それがウールなのです。 それではウールにはどのような特徴があるでしょうか。 ウールは表面がスケールと呼ばれるうろこ状になっていて、大量の汗や湿気をスケールから繊維内に吸収します。 繊維内にいっぱいになるとスケールが開いて空中に湿気を放出します。そのため常に湿度が保たれ、蒸れがなくさらっとした肌触りに。 湿気を放出する際に気化冷却が起こり、暑さも逃がしていきます。 ウールはクリンプ(ばね状)になっているので実際は繊維が長く、それだけたくさんの水分を吸い込むことができます。 その量は綿の2倍、化学繊維の50倍です。 一方で熱の伝達は綿の2分の1、化学繊維の5分の1程度。寒さはもちろん暑さからも体を守ります。 ウールの中でも繊維の細いメリノウールは、しなやかに体を覆い、しっとりと素肌になじむ心地良さいっぱいの天然素材です。 さらにニュージーランドのZQ認定基準のひとつに、ストレスなく羊たちを飼育するという項目があります。 ストレスからから歪むことなく均一に育まれたZQメリノはメリノウールのなかでも高い品質をもっています。 これからの時期、YARNのメリノアンダーウェアで暑さや湿気から解放されて、心地良くお過ごしになれますように。 -
2023.05.12
におわない ウールの効用
雨や気温の差がある今の時期、長袖や羽織が手放せない日が続きます。予想以上の蒸し暑さ から思わぬ汗をかくことで、臭いが気になることも多いのではないでしょうか。 発汗は体温調節をするための機能です。単に暑さだけではなく、上がったり下がったりの微妙な 体温変化でも毛穴から水蒸気状の汗を発することで、体温を下げ体温を保つのですが、発汗が 重なると、肌や着用した服に付着しているバクテリアや微生物によって、体臭が発生します。 臭いを管理するウール 厳しい自然の下で羊たちの体を守るため、羊毛には天然の脂が含まれています。撥水性が高い 脂は汚れをはじき、またウール表面のキューティクル状のスケールが湿度の変化で開閉すること で、高い調湿機能を発揮します。 温度調節・湿度調節・汚れにくさといった複雑な機能がからみあって、化学繊維はもちろん他の 天然繊維と比較しても、臭いがつきにくい素材といえます。 オタゴ大学では「様々な繊維が臭いに与える影響を比較させる実験」を実施した結果、ZQメリノ で作られた繊維は、合成繊維と比べて着用後に臭いが発生する傾向が少ないことを発見しまし た。また研究の結果から着用後繊維に付く脇の下の臭いの強さは、繊維の種類によって影響さ れることがわかりました。 最も強く臭うのが化学繊維で、綿は中レベル、ウールは低レベルという結果が出ています。 着用中も臭いがつきにくく、脱衣後も定着しない。軽く干すだけで頻繁に洗濯の必要がないこと も、エシカルな生活を後押ししてくれます。 汗をかいたり体が冷えたりでむっと汗をかきやすい時期です。またお洗濯が室内干しになるこれ からの時期に、メリノの力で臭いを気にせず、ストレスなく過ごしましょう。 -
2023.04.22
ホールガーメント工場「寺田ニット」へ訪問してきました。
昨年 12 月末の発売開始から大好評の「Tiaki /ティアキ」シリーズ。 このコレクションはひと針も縫うことなく立体的に成型する日本発の「ホールガーメント技術*」を採用していま す。*ホールガーメントは(株)島精機の登録商標です 1月に日本に帰国した際、ホールガーメント編機でティアキシリーズを編んでいただいている株式会社寺田ニットさんへ訪問してきました。 美しい自然につつまれた富士の麓、山梨県に工場がありました。 創業は昭和 50 年。廃業するニット工場が増えてくるなか、将来にわたって事業を継続して ゆくためホールガーメント編機に出会ったのは 22 年前のこと。 日本国内で2番目の導入だったそうです。株式会社島精機さんと二人三脚での改善を繰り返し、使いこなせるようになるまでに約 2 年をかけ今の技術の基礎ができました。そのなかでもハイゲージに特化した モノづくりは寺田ニットでしかできない技術。そのノウハウが YARN のクオリティを支え てくださっています。 実際に工場の現場でホールガーメント編機を見学させていただきました。 下準備したウールの糸と、デ ザインデータをセットしてから約 60 分。コンピュータで設計したデザイン通りにニットがホールガーメント編機から出力される様子は、正にニットの 3D プリンターという感じで驚きました。 機械はハイゲージ用、ローゲージ用というように、編み目の大きさに合わせて作られています。 ハイゲージ用は細い針がずらりと3000本並んでいて、それが巧みに動き立体的にニットが編み上がってきます。 YARNのの製品は17マイクロンの極細糸を使用しハイゲージで編み立てます。これに対応できるニット機は世界でも数が少なく精密なもので、調子を整えたりメンテナンスにとても気を配っているとのこと。 細かな糸くずが混入したり埃が詰まってしまうと機械が動かなくなってしまう、取り除くだだけでもとても時間がかかることなど、特殊なホールガーメント 機を扱うには経験と熟練の腕が不可欠ということを知りました。 寺田社長は、世の中がより安い服を求めた結果、昔と比べて良いものが少なくなってきたと感じていたそうです。大量に服をつくって大量に廃棄する、そんな悪循環から脱却するため、6 年ほど前から自然素材を着ることの大切さを考えていました。 「地球環境に優しく、カラダに良い素材にこだわってモノづくりをしたい。お客様が心地よく、幸せな気持ちなってもらうこと。それがモノづくりをする私たちの意義です。」そんな 想いは YARN と共通するところ。モノづくりのパートナーが同じ価値観でいてくださることが本当に嬉しかったです。 寺田社長がこれまで何年も何十年もかけて積み上げてきた技術と想い。これからも、さらによいニットをつくりたい、追求し続けたい、誰も成し遂げていないことにチャレンジしたいという探究心とエネルギーであふれていました。 そして日本の豊かな自然環境を守ること、これからの地球環境に負担をかけないものづくりのあり方を模索すること、行動に移していくことを話されました。 寺田ニットの現場の皆さんはそれぞれのポジションで経験をたくさん積んだプロフェショナル。 細やかな配慮があってこそ、着る人のことを考えたやさしい製品ができるのだと思いました。 日本人に根付く、相手を思いやる気持ちがもの作りにも反映されるのだと思います。 ホールガーメント技術はカラダにも、地球にも優しい技術。 この技術を活用して YARN は、現在のものづくりの現実と課題を知ること、必要な量だけを製造し地球環境の未来も「ずっと優しく」守り続けたい。そんな思いから Tiaki シリーズを発表しました。 自分の行動が環境にどんなインパクトを与えるのか、自然の美しさを受け継いでいくために自分にできることは何なのか、そんなことにも思いをはせていただけますと幸いです。 YARN はこれからもホールガーメントを活用した、コレク ションやラインナップを企画してゆきたいと考えています。