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2022.08.07
コラム:ブランドと人権 エシカルファッションとは。
ブランドと人権の関係性。だれのために? 今回は大量生産の裏側のこと。 フェアトレードについて。 『Who made my clothes?(私の服って誰が作ったの?)』 このムーブメントをご存知ですか? 発端は2013年4月24日にバングラディッシュの首都ダッカで起きたビルの崩落事故。「ラナ・プラザ(RANA PLAZA)の悲劇」(詳細はググってください🤳😃) 大量生産における人権問題。 多くの命が失われたバングラディシュの縫製工の賃金は1日中劣悪な環境で働いて時給数十円だったそうです。 この事故から消費者ムーブメントに繋がり、運動が欧州各地で起こり、ブランド側の透明性や説明責任が問われていきました。 この当時、私はニュージーランドにいてこのムーブメントのことを知りました。 だれかの犠牲の上に作られた洋服の実態を知りショックを受けました。 私がYARNを立ち上げたいと思った一つのきっかけにもなっています。 トレーサビリティー(透明性) 生産者や労働環境、プロセスのわかるものづくりこれは本当に大切な仕組みだと思いました。 人件費が安い国で生産した商品を先進国で販売する仕組みのファストファッションだけでなく、高級ブランドのブランドの価値を下げないための大量廃棄も問題です。 たとえば2018年には、某イギリスの高級ブランドが、およそ42億円分の売れ残りの在庫品を安売りや転売などでブランド価値を下げない目的で焼却処分していたことが世界的に知られました。 アパレル・ファッション業界には「余剰在庫、在庫過多」問題が根深く存在しています。 シーズン毎の入れ替え、トレンドを追い目新しいデザインを展開するため、さらに低価格競争の世の流れによって、「過剰生産」する仕組みが出来上がっています。 このような余剰在庫問題は、特定のブランドだけが抱える課題ではありません。多くのメーカー・ブランドが新品の製品を毎年焼却処分している現況があるのです。 どうして燃やす必要があるのか、ということのひとつに経営サイドの問題として在庫は残しておくと資産として税金がかかりこれを回避するという理由もあります。 作り手にとって(生産に携わる全ての人)燃やされてしまったり埋め立てられてしまう事実は悲しい。 聞いた話で、日本のニット職人さんが時間をかけて作ったニットを販売側では新発売から数週間後にはバーゲンのワゴンコーナーに置かれていたことを知って、自分のしてる事はなんだろうとやりきれなかったとおっしゃっていました。 「だれも悲しまず犠牲にならない物作り」を実現するには、 時間をかけて作ったもの、日本やニュージーランドで携わる方々の対価がしっかり支払われるためにはお客様に購入いただく商品のお値段がどうしても高くなってしまうということをご理解いただけたらと思います。 エシカルファッションとは? エシカルとは日本語に訳すと「倫理的な」という意味になります。 エシカルファッションは「人、動物、社会、環境に優しい取り組みをするファッションのこと」 •生産側として 生産にまつわる過程において、生産者の権利を尊重していること。動物ウェルフェアもです。 生産者の賃金や権利はもちろん、整った労働環境の中で働いていることがポイントとなります。 •消費側としてのエシカル消費とは 皆さんが何気なく選んでいる服、お気に入りの服が、どんなふうにつくられているのかについて、少し敏感になって想像力を働かせることが、犠牲のうえに成り立っているファッション産業の構造を変えることが出来ます。 毎日の生活のすべてのモノをフェアトレード、エシカル、オーガニックにするのはとても難しいですし、あまり固執して考えるのはよくないけれど(私は楽しくをモットーにエシカルを取り入れています。)ゆるりと楽しくエシカルを考えてみるといいかもですね。 値段にかかわらず(安くても高くても)気に入って長く着たり、サイズや好みが変わったらフリマや人に譲ったりすることもできます。 最後の最後は小さく切って雑巾などお掃除に使うなど。 【エシカル】という言葉や定義は日本では耳慣れないかもしれませんが最近では見聞きすることも多くなってきたのではないかと思います。 私YOKOは2016年にRooms大合同展示会(東京)のエシカルブースに出展しました。その時はNZメリノで作ったベビーブランケットや寝具を紹介しましたがまだまだ「エシカルってなに?」という時代でした。 その時の感想は「ぜんぜんサスティナブルやエシカルという取り組みやその商品の意味が響かないんだ、、伝わらない、、、」というとてももどかしい思いをしました。 それでもその大切さを伝えたいと2018年にインナーウェアにフォーカスした「YARN」を立ち上げ現在に至ります。 YARNの商品はエシカルな生産をすることで原価が上がってしまいます。 でもできるだけ気に入って長く着ていただきたいので着心地やデザインにこだわっています。 そして破れても着てもらえるようお直しも承っています。 小さな穴だったらご自分でもお直しいただける方法をお伝えしたりしています。 つくるだけで終わりにしない、 皆さまの生活に寄り添い続けられるYARNでありたいと考えています。 -
2022.08.01
コラム:なぜYARNはメイドインジャパンにこだわるのか。
YARNのウェアは100%ニュージーランドメリノウール を使いMade in Japanにこだわっています。 それは日本の品質と技術が高いという側面だけではなく、日本の縫製工場産業の置かれている深刻な状況も伝えたいという思いがあります。 日本のものづくり。 長い時を経て積み上げられた経験、作り手の精神と技術は他の国にはないとても特別なものがある、私はメイドインジャパンがいかに素晴らしいかを海外で暮らすことでより深く知りました。 日本にいたら当たり前なこと(行き届いた丁寧さと品質に対するクオリティ)が外に出たら全然違ったのです!長い歴史の中で培われたものづくりに取り組む真摯な取り組み、それを支える精神性はとても尊いものです。 残念なことに。 ファストファッションの波とともに、ブランドや企業の意識はいかに安く大量に販売するかへ 人々は安くて見た目の良いものをたくさん買うことへ流れてしまいました。 人件費、工賃の安い国で生産すれば原価を抑えれます。国産は当然高くなります。 大量生産、工賃の安さを求めて縫製の現場生産が海外に移行し、国内においては縫製工場が著しく減少しているという深刻な問題があります。 これまで築きあげてきた日本の服作りの技術を継承すべく働き手が増えず、職人の高齢化も進み「縫製工」という仕事への担い手がとても少なくなっています。 縫製工場の現状。 これはYARNが常に直面している難しい問題です。 例えば、先月まで請け負ってもらえた工場で、YARNの希望する縫製方法で特殊なミシンを扱える技術者が高齢でやめてしまってもうできない。テクニックの必要な縫製ができるミシンの使い手がほとんどおらずYARNの手間のかかる縫製のオーダーを受けてもらえず、また一から工場探しになることも多々あります。 YARN製品の縫製はどこの縫製工場でもできるというわけでありません。 縫製がとても難しいメリノ生地が扱え、フラットシーマ(※)技法で縫製できる職人と専用ミシンのある工場で生産を行なっていますが、こういった縫製のできる工場は極わずかしかありません。 (※フラットシーマ、肌へのあたり部分がなるべくフラットになることで肌への刺激を軽減させることを目的とした縫製方法) 残念ながらこういった技術と設備のある工場がどんどん減少しているのが現状です。 YARNも立ち上げた当初はメリノ生地を扱った経験がない工場さんに製品を作ってもらえるようお願いし、これまで何度もミーティングと試作を重ねて製品にしています。 生地自体が有機的で動きやすく丸まりやすい性質を持つので1着縫製するのに他の繊維と比べて時間がとてもかかる作業となります。職人泣かせすぎる製品なのです。 YARNは小さなブランドですので大量に生産し在庫を持つことができません。 必要な分だけ必要な方に届くようにと、過剰には作りたくないという考えも持っています。 生産の裏側のことですが日々取り組んでいるこういった背景もご理解いただけますと幸いです。 どの工程でも手を抜かず良いものを提供したいという思い出全力で取り組んでいます。 -
2022.06.21
『MATARIKI −マタリキ』ニュージーランド先住民マオリ族のお正月
マタリキとはマオリ語でおうし座のそばにある昴(スバル)プレアデス星団のことです。 ニュージーランドでは季節が日本と真逆ですのでこれから冬至に入ります。 もっとも夜が長いミッドウインター、冬至を迎えたあと、 少しづつ日が長く始めるこの時期、東の空にマタリキの星は輝き始めます。 マオリ族は古くから星を見て航海をする優れた航海術を持っていました。 特に夜に航海をする際は、夜空の星を見分けることは大事なこととされ、星の存在が常に生活とともにありました。 おうし座(の中のプレアデス星団)を見つけることは、マオリ族にとって新しい事の始まりを象徴し、新しい年の始まりを知らせるシグナルです。 マオリの人々はマタリキを新しい一年の始まりとしてお祝いします。 家族や親戚で集まり、先祖代々の霊をしのびながら、食事や歌を楽しみマタリキを過ごします。 その年の豊作豊漁に感謝するとともに、来たる年も自然からの恵みがあるように願います。 ちょうど日本のお盆と正月を一緒にしたような感じです。ご馳走が振舞われ、お互いのことをねぎらい、家族や親類部族に伝わる古い話をしたりして過ごします。 この時期、幼稚園や小学校では、マオリの歌を唄ったり、カパハカと呼ばれるダンスを踊ったり、食べ物をシェアしたりしてみんなでお祝いします。 各地でイベントが開催され国中でお祝いします。(祝日にもなっています。) このマタリキには神話があって、マオリ族に限らずNZの子供たちは皆知っています。 私も娘から物語をいろいろ教えてもらいました。 神話では、この7つの星からなるプレアデス星団は母と6人の娘であり、母の名前はマタリキです。 毎年6人の娘と一緒に大地の神様であるマタリキの母「パパトゥアヌク」を訪ねます。 マタリキの娘はそれぞれ特徴があって、新年の準備の手伝いをしながら、祖母であるパパトゥアヌクからいろいろなことを教わります。 7人の神様のそれぞれの役割はこのような感じになります。 「マタリキ」 星団全体の名にもなっているマタリキですが、特定の星を指す場合は、希望と内省、環境とのつながり、人々の健康と幸福を意味します。 「トゥプアランギ」 美しい歌声を持つ神様、その歌声で自然界や生き物たちを喜びで満たし生き生きとさせます。 「ワイティ」と「ワイタ」 彼らは双子です。虫や生物、鳥たちが自然界で互いが助け合い循環し続けるよう、海や森の環境と生態系を守っています。 「トゥプアヌク」 トゥプ「成長」ヌクは「大地」を意味します。自然界で育つ食物や薬草の成長をサポートします。 「ウルランギ」 無邪気さと愛情に溢れ明るさを周りに与えます。年穏やかで周りに良い影響を与えることが常に成功の鍵であることを私たちに教えてくれます。 「ヒワ・イ・テ・ランギ」 願いの星で、来たる年の希望や願望を叶えるのを助けると言われています。 私も子供たちもニュージーランドに暮らしながらマオリ族のカルチャーをとても身近に感じています。 教育にも積極的に取り入れていますので、セレモニーや何か特別な催しの時はマオリ族のダンス(ハカ)を踊り歌います。 象徴的なのはニュージーランド国歌はマオリ語で1番を歌い、2番を英語で歌います。 ニュージーランド国全体がマオリ族の文化を尊重し守り続けている所が素敵だなぁと心から思います。 マオリ族の考え方は森羅万象を尊い、自然崇拝ですので、日本が八百万の神様を尊ぶのにとてもよく似ています。それもあって日本人の私にとってはとても身近に感じる考え方や文化です。