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2022.10.15
interview:株式会社ニッケテキスタイル(前編)
今回は9月に発表したYARNの新作「Roto / ロト シリーズ」の生地を開発してくださいました、株式会社ニッケテキスタイルのニット製品グループの山下さん、松山さんにお話をうかがいました。2回に分けて記事をお届けします。今回は前編になります。 ニッケテキスタイル(以下NIKKE)とロトの生地づくりを始めたきっかけを教えてください。 【YARN】定番品として人気のあった「Huia /フイア」の生地がニュージーランドで販売されなくなり、生産ができなくなってしまったのです。薄手で軽く、体に馴染むフイアはリピーターも多く、なるべく近い生地をつくりたいと取り組み始めました。生地を探し始めたのですが、これといった生地を見つけることができませんでしたし、また販売中止になる可能性もあるので、定番生地は安定してお届けできる体制が必要だと考えました。 ちょうどNZウールを扱うNIKKEさんと意見交換をさせていただく機会がありました。メリノウールをもっと普及させたい、上質なメリノウールを身につけることがいかに心地よいかを伝えたいと、熱い想いがYARNと同じだと感じました。NIKKEが築きあげてきた、技術、品質、モノづくりのネットワークなど、世界中のウールを知り尽くした企業と開発できることは心強く、「Roto/ロト」の生地づくりがスタートしました。 YARNの最初の印象はいかがでしたか? 【NIKKE】 初めてYARNさんのお話をお聞きしたときは、日本にこんなにもメリノウールにこだわったインナーウェアブランドがあるのかと驚きました。これまで大手のインナーウェアのアパレルメーカーにメリノウールを提案してきたのですが、最後は価格が合わないことで、折角の素材が採用されずに歯がゆい思いをしていたからです。またブランドオーナー自らニュージーランドに住み、現地から情報を発信していることも非常に目新しく感じました。 これまでのYARNのモノづくりと、今回のプロジェクトは具体的にどこが違うのですか? 【YARN】フイアは生地を購入していましたが、ロトはNIKKEと生地の開発から始めました。120年以上歴史のあるウール製品を提供してきた会社ですし、紡績、織絨、染色と一貫生産を行う工場で原料から厳選した生産ができる。YARNの求める生地を1からつくってもらったカスタムメイドの生地であることが最大のポイントです。 YARNとの仕事はNIKKEにとってはどのようなものでしたか? 【NIKKE】素材感、着心地を追求し、縫製仕様にまで拘るYARNの姿勢に非常に感銘をうけました。私たちはウールの良さは十分に分かっているのですが、その良さを消費者に伝えることがとても難しいと日々感じています。YARNとのお仕事で女性消費者の方の視点や、意見が聞けるようになり、素材を開発する意欲が高まりました。 ロトの生地の特長を教えてください。 【NIKKE】非常に薄い生地でありながら、着心地と耐久性を考えた生地づくりを行いました。17.5ミクロンのメリノウールという細い原料を使うことで、誰が着用しても肌触りが良い素材を目指しました。また耐久性を考え、糸づくり、編み設計、仕上げ加工も通常ではない方法で生地づくりをしています。 ロトの生地づくりにおいて、こだわった点・大切にした点はどこですか? 【NIKKE】特に原料にこだわっています。弊社はニュージーランドのメリノウールの取り扱いは多いですが、その中でも現地の厳しいウールの品質基準である「ZQ認証(*1)」を取得した肌への刺激が少ない17.5ミクロンのスーパーエクストラファインメリノウールのみ100%を原料に使用しています。非常に入手が困難な原料なのですがZQ認証のメリノウールを使用することはYARNのこだわりです。私たちはその商品コンセプトに賛同し安定供給することにしました。 (*1)ZQ認証 2006年にザ・ニュージーランドメリノ・カンパニーが始動させた、羊毛生産農家を対象に社会的、倫理的基準を設け第三者が監査し認証するシステム。原料品質はもちろんのこと、羊の健康や労働環境、環境保全といった、様々な監査項目において認証されたエシカルでサスティナブルなメリノウールです。 【YARN】フイアよりも進化させたいという想いがありました。ロトはフイアの18.9ミクロンよりもさらに細い17.5ミクロンの極細糸のため、肌への刺激がありません。ただ糸が細くなると生地は薄くなります。最初のサンプルでは薄すぎて少し生地に頼りなさを感じました。また肌に触れる時のふんわりしたウールの優しさを 表現したい想いをお伝えしました。ロトは肌あたりをなめらかに、肌への刺激をさらに少なくすること。身につけていると思えない軽さ。汗で蒸れたり、痒みが伴ったり、冷やさず身体を守る、ストレスフリーを目指します。1日を支える役割を持つ アンダーウェアですから安心感があるものにしたい。 一般的に100%メリノウール の下着でネックになるのが耐久性です。多くのメーカーはこれを懸念し、ポリエステルを混ぜたりしています。YARNのこだわりは100%メリノの心地よさです。デリケートな部分を覆うアンダーウェアは特に繊細に考えています。フイアは1日の着用でウエストが緩みやすくなっていました。ロトでは体型に合わせて柔軟に伸びつつ、戻る力もあるので緩みすぎないことも改善ポイントです。 ロトの生地づくりで難しかったところはどこですか? 【NIKKE】通常のウールは、縮みやすく、生地が弱いので耐久性がありません。今回の生地は、防縮加工をしたZQメリノウールの17.5ミクロンと非常に細いウール原料を使用し、細い糸を作って編み密度を細かくし、薄い生地を作りました。また仕上げ工程もインナー用にふっくらと柔らかく仕上げました。また、今回の生地の天竺という編み方は、薄い生地は出来るが伸びが少ないのが特徴ですが、実際の着心地を考えストレッチ性も考慮した生地づくりを行いました。通常スチレッチ性のデータはあまりとらないのですが、YARNのこだわりをお聞きしデータ検証を重ねて開発しました。 それぞれの仕事についてどんな印象をもちましたか? 【YARN】 原毛から製品まで一貫した仕組みがあること、地域のモノづくりネットワークは素晴らしく、リクエストすると各分野の専門家とすぐに対応して下さいました。NIKKEのウールへの見識・技術はとても深く多くのことを学ばせていただいています。尾州は世界3大ウール地とよばれ、全国シェア70%以上を占める国内最大の毛織物の産地ですから、その技術でメイドインジャパンの品質の高いものがつくれることは素晴らしいことです。 【NIKKE】 とにかく消費者の立場に立ってモノづくりをしている印象が強いです。「もう無理」と言いたくなる程のモノづくりへのこだわりが素晴らしく、開発は大変でした(笑) 女性向けインナーが中心なので、男性である私が使用することは難しいため、新しく入社した松山さんに開発メンバーに入って貰い、これからも良い商品づくりに貢献したいと思います。 仕上がった生地や商品を手にとった感想はいかがでしたか? 【NIKKE】 滑らかで、ソフトで、膨らみがある究極のインナー素材が出来たと感じました。通常のウール素材では、やはり秋冬素材のイメージが強いですが、この生地なら年間を通して着用できるのではないかと思いました。 【YARN】 肌に触れた時、みずみずしさや、潤いが肌に浸透していく感覚がありました。エアリーな軽さ・空気感・透け感がありながら、しっかりとした芯も感じさせます。ニュージーランドの美しい自然環境、湖畔、水の豊かさが浮かび、そこからコレクション名を「ロト(湖)」と名づけました。 (後編につづく) -
2022.03.20
interview: IKURAさん
フードクリエイターのIKURAさんにお話をうかがいました。 いくらさんのこれまでのバックグラウンドを教えてください 2004年にフリーの料理家になりました。東京の下町にてカフェをオープン後、ケータリングや舞台のフード監修など、食の提供をベースに活動してきました。様々な異業種の方とコラボをしながら、イベント企画や映像制作の脚本を手掛けるなど「たべる」ことを五感を通した様々な形で表現してきました。 現在のお仕事の内容を教えてください 2020年に「暮らしクリエイティブスタジオeatoss(イートス)」を立ち上げ、代表をつとめています。eatossでは「おいしいはうれしい」をコンセプトに、edit & PR / eat / education の3つの「e」を軸にサービス提供しています。現在は講師業を主な活動としオンライン講座を主宰しながら「おいしい」を「こころで感じ表現できる」ヒトを育成しています。近年はプロデュース業も手掛けておりカフェ開業を目指す方をサポートしています。 食に携わるいくらさんの実現したい夢や想いは何ですか? 季節や地域の食材を使い、世界の人々に「なにげない日々のごはん」をふるまいたいです。料理は私にとって「こころの表現」であり「愛」のかたちです。「おいしい」を通じて人種、性別、言語をこえ、世界の人とこころが繋がる瞬間を体験したいです。 また講義や講演活動を通して「おいしい食卓」から「また明日もがんばろう」という生きる力を与えることで、社会に貢献してゆきたいです。 YARNを知ったきっかけを教えてください インスタグラム投稿を偶然見つけたことがきっかけでした。ちょうど環境に興味を持ちはじめた時期であったことと、シンプルで上質なインナーを探していたことが重なり、YARNさんの活動に興味を持ちました。 その時、ちょうどYARNさんが開催されていたオンラインコミュニティに参加させていただき、ニュージーランドのお話や「モノづくり」への想いを知りました。商品を手にすると、環境への感謝につながるような気持ちになり愛用しています。 YARNオーナー陽子についてどんな印象をもっていますか? 「ヒト」「モノ」に対して真摯な方という印象があります。一つひとつ言葉を紡ぐように話す姿が印象的で、丁寧でシャイな方のようにも感じています(笑)。「モノづくり」や「生産者」さんの背景や未来を願う気持ちが、商品を通してひしひしと感じられ、いつも共感しています。ニュージーランドと日本、双方の良い部分を融合させる活動は、NZを身近に感じるきっかけになりました。 YARNを愛用くださっていますがメリノウール素材・着心地・デザイン等、着てみた感想を教えてください レギンスとショーツ、それぞれ色違いを愛用しています。着ればきるほどに肌に馴染み、やんわりとする感覚がとても好きです。しめつけもなく温かいのにさらりとしていて、数あるインナーの中から、ついついYARNを手にとってしまいます。いつも少し大きめサイズを選んでいるので、インナーとしてだけではなく「魅せられる重ね着」としても楽しんでいます。 お腹をすっぽり包んでくれるショーツは安心感と大人の上品さがあり、とても気に入っています。透け感もちょうどよく、ルームウェアとしてはもちろんヨガウェアとしても愛用しています。 YARNの取り組むサスティナブルなモノづくりをどのように思われますか? 共感という言葉を超えて「願い、祈り」にも似た気持ちでYARNさん、そしてyokoさんの発信を拝見しています。世界を超えてみんなで手をとり「今、やれることをやっていこう!」という気持ちとともに、「やらなくてはいけない」と感じています。 素材を通して自然からいただいているものや、私たち人間が地球や生き物に対してできること。全てが循環の中にあること。サスティナブルなモノづくりの大切さを意識させてもらっています。私自身も共に考え、行動できればと思っています。 いくらさんの食の活動と、YARNの衣服の活動は、共通項があるような気がしますがいかがですか? はい、私もそう思っております。「たべること」の背景には単純に「つくるヒト」「食材」だけでなく大きな循環が関わっています。個々の暮らしや「食への意識」が環境をつくり出しているとさえ思っています。 「おいしい」をつくり出すには、食材があり、つくる人がいて、その奥に生産者さんがいて、偉大な自然からの恵みが必要です。暮らしの中で手にするモノ、口にするモノ、一つひとつがみんなの「意識」から「変化」を起こすと思っています。 「おいしい」は当たり前ではなく、食材を生み出す環境と、私たち自身の心と体が「健康」でなくてはなりません。自分をいたわることは身近な一歩であり、自然と共に生きる私たちが「やるべきこと」を発見するきっかけになると信じています。 YARNの今後に期待することはありますか? 色やデザイン、丈のバリエーションなど、新作を楽しみにしています。次はどんな名前かな、そんな想像もワクワクします。今後、暮らし周りの小物や寝具シリーズ、ナイトウェアなども期待しています。 YARNさんとは、業種は違えど「想い」で繋がっていると感じています。それがこれからの時代に大切なことだと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします! Ikuraさんとのインスタライブでの動画はこちらからご覧いただけます。 インスタグラム -
2021.12.13
interview:河村 美琴
裂き編みバッグデザイナー 今回は、YARNのメリノ生地でバッグを編んでくださった、裂き編みバッグブランド「MIKI KAWAMURA」のデザイナー河村美琴さんに、お話をうかがいました。 美琴さんのこれまでのバックグラウンドを教えてください 母が編物講師をしていました。機械編みをする母の膝の上が幼い頃の私のゆりかごでした。ですが、私が編み物の魅力に取り憑かれたのは大人になってから。しかも母が亡くなってずいぶん経ってからでした。はじめは市販の毛糸で服やバッグを編んでいたのですが、次第に誰も手がけていない作品を作りたいと思うようになりました。 そんな時に出会ったのが裂き編みです。 布を裂いてひも状の布糸をつくることから始まる裂き編みは、手間がかかりますが出来上がった時に愛おしく、使いやすくて型崩れしないなど魅力がいっぱいでした。 現在のお仕事の内容を教えてください。 福岡の自宅兼アトリエにて裂き編みバッグを制作しています。全国各地のギャラリーやセレクトショップ、百貨店等で展示会やPOP UP SHOPをしています。 YARNを知ったきっかけを教えてください オンラインコミュニティでYARNオーナーの陽子さんと知り合ったのがきっかけでした。福岡でYARNの展示会があることを教えていただきレギンスを購入しました。 YARNのメリノ生地での作品づくりで意識したこと、工夫したことを教えてください。 YARNの上質なメリノウールをバッグにすることはとても贅沢なこと。その生地を2cm幅の糸に裁断することに抵抗がなかったのかと言われると、それは贅沢が故に抵抗しかなかったです(笑)。メリノウール素材の良さを感じていただけるように、丁寧に大切に扱って編むことを意識しました。 生地を糸にする時、よこ地に裁断するとゴムのように糸が伸びます。YARNのウェアが身体に寄り添うのはこのよこ地の柔軟性のおかげなのだなと生地を扱いながら感じました。この柔軟な部分がバッグに物を入れた時に伸びやすくなるため、たて地に裁断をしました。たて地は柔軟性がありながらもしっかりとしたホールド感があるので、バッグに仕立てるのに最適でした。 フリンジ部分は、YARNウェアの端切れからカットしてつくりました。フリンジもたて地でとっています。しっとりと肌触りの良いフリンジに仕上がりました。普段はコットンの生地を編んでいますが、コットンよりもしなやかで肌触りが良く、編んでいて心落ち着くような不思議な感覚でした。なめらかに指の間を通るメリノウールの感触がとても気持ちよかったです。メリノウールでバッグをつくる機会を下さったことに感謝です。ありがとうございます。 YARNのオーナーである陽子についてどんな印象をもっていますか? メリノウールの産地ニュージーランドから、その素材の素晴らしさを日本に向けて発信し続けてくださる人。メリノウールやニュージーランドを語る陽子さんの声は輝いて聞こえます。自然の中にある人と未来を大切に紡いでくれる人。現地の暮らしをSNSで発信されているのを見ると、すぐにでもニュージーランド行きたい気持ちになります。 YARNを愛用くださっていますが、メリノウール素材・着心地・デザイン等、着てみた感想を教えてください レギンス、ショーツ、マスクを愛用しています。YARNに出会う前はウール独特のチクチク感がとても苦手でした。肌が弱いので本当にチクチクしないのか、かなり疑ったところから使ってみましたが、不思議なくらいチクチクしないんです!ショーツはお腹までしっかりと包み込む安心感と、この手のショーツにありがちなものとは違うデザインが素晴らしいと思いました。 おすすめなのは生活必需品となったマスクです。メリノマスクは息がしやすく蒸れない!肌触りも最高で、今やなくてはならない存在です。 YARNの取り組むサスティナブルなモノづくりをどのように思われますか? 今ある自然や資源を守りながら豊かな暮らしを続けていくこと。YARNのインナーウェアを着続けることがその取り組みの一つだと感じます。YARNに出会えたことがサスティナブルについて考えるきっかけの一つだったと感じます。 YARNの今後に期待することはありますか? 良いものをつくり続けて欲しいです。YARNのウェアが多くの人に届くことで、自然や社会を守ることに繋がっていくことを願っています。